広島家庭裁判所 平成10年(家)1158号 審判 1999年3月17日
申立人 X
相手方 Y
未成年者 A
B
主文
本件申立をいずれも却下する。
理由
1 申立の趣旨
申立人が、平成8年3月26日成立した広島地方裁判所平成×年タ第××号事件の和解条項第4項に基づき相手方に支払っている未成年者両名の養育費の支払い義務を免除するとの審判を求める。
2 申立の実情
前記和解において、申立人は相手方に土地を譲渡したが、当時土地には3000万円の根抵当権が設定されていた。しかし、根抵当権は、平成10年4月に解除されたから、これに伴って前記養育費に相当する金額は全額支払われたことになる。よって、申立の趣旨のとおりの審判を求める。
3 本件記録によると、次の事実が認められる。
(1) 申立人が原告となり、相手方が被告となっている前記離婚請求訴訟において、前記訴訟上の和解が成立した。和解条項は、第1項が、未成年者両名の親権者を何れも相手方と定めて協議離婚をすること、第2項が、廿日市市○○字○○××番××雑種地138平方メートル及び廿日市市△△字△△××番××雑種地108平方メートル(以下「本件土地」という)が相手方の所有であることを確認する、第3項が、申立人は相手方に対し本件土地の持分2分の1につき真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続をする、第4項が、申立人は相手方に対し未成年者両名の養育費等として平成8年3月から長男である未成年者Bが満23歳に達する年の12月まで毎月末日限り1か月金5万円ずつを支払うこととなっている。
(2) 前記和解が成立したときには、本件土地に極度額3000万円の根抵当権設定登記がなされていたが、平成10年4月5日解除となり、その根抵当権設定登記の抹消登記がなされている。
4 前記認定事実によると、申立人の主張するとおり、前記和解成立時に本件土地に設定されていた根抵当権が解除され、その抹消登記がなされて、本件土地の資産価値が変化したことは明らかであるが、これによって相手方の可処分所得が直ちに増加するわけではないし、前記和解において、根抵当権を解除したときには養育費を減額あるいは免除とすることを明示、黙示的に合意した形跡はない。そもそも、本件土地についての和解は、離婚に伴う財産関係の清算を目的としてなされたものであり、当時本件土地につき極度額金3000万円の根抵当権設定登記があること、将来解除により根抵当権が消滅してその抹消登記がなされることがありうることは当然に予測できたことである。したがって、申立人が主張している事由は、未成年者の養育費を減額し、あるいは養育費の支払義務を消滅させるような事情変更には当たらない。
また、家庭裁判所調査官の調査報告書等に徴しても、その他に未成年者らの養育費に関する前記訴訟上の和解を変更しなければならないような事情の変更があるとは認められない。
よって、本件申立は理由がないからこれを却下することとし、主文のとおり審判する。
(家事審判官 増田定義)